血液型は知らなくて良い!
 日本人は血液型の話がとても好きで、『血液型占い』や『血液型性格判断』などがブームになったりします。これは世界から「ずいぶん変な国民」・「非科学的国民」と思われています。
 そもそも、血液型とはなんでしょうか。血液型も遺伝子に左右された個々人に特有なもので個人識別にとても役にたちます。当然遺伝していくものです。20数種類の血液型分類法があり、そのうちで一般に知られていて、しかも大きく影響するのがABO式・Rh式です。ですから日本で血液型というと、一般にはこのABO式をさしています。

 それでは、これについて簡単に説明しましょう。実はO型は「おー型」ではなくて、「ゼロ型」です。つまり、「型がない」ということです。よく知られているようにO型の人が他の血液型の人に輸血できるのはまさしくこの「型がない」からなのです。血液型は、A物質とB物質から決定されています。両方持っている人がAB型というわけです。したがって、A型の人にはB型に対する抗体がありますから、B型の血液は輸血できません。

 さて、日本人はたいてい自分の血液型を知っていますが、これは日本人くらいなものです。欧米人に「あなたの血液型は?」と聞いても、「そんなの知らない」と答えられます。この人たちはのんきだな自分の血液型を知っていないと、緊急の輸血に困るんじゃないのかなと日本人は考えるでしょうね。こうして日本の文化には<血液型は知って当然・知らねばならない>という欧米人にはまったく理解不能なことが含まれるのです。

 最近、出産された方に聞いてみると、以前よりは「こどもの血液型は聞いていない・教えてもらえなかった」という人が増えてきました。そうです、まともな考え方の産婦人科では新生児の血液型の検査はしません!しないことが医学的にも当然なのです。これは次の2点から検査しないのです。
 1.血液型を知っておかなければならない理由がない
 もし事故にあって輸血が必要なときには血液型は必ず再検査するし、輸血の時に果たしてこの血液を輸血して大丈夫かどうかの検査(クロスマッチ)も必ずします。これは、ABO・Rh以外の血液型不適合もあるからです。クロスマッチとは、自分の血液と輸血の血液を少量混合して固まらないか調べることです。さらに、もし血液型を間違って覚えていたら、病院で告げても何にも意味はないことにもなります。患者さんの言うことを鵜呑みにして医療事故があったらそれは病院の責任ですから、当然検査をするのです。ですから「自分の血液型を知っておかないと事故の時大変よ」は嘘です。さらにこんな笑えない実話を経験しました。新生児室で父と母が言い争っています。「俺とお前の血液型でどうしてこの血液型のこどもが生まれるんだ」 つまり浮気したな?と言い争っているのです。いろいろ聞いてみて分かったことは、父親が自分の血液型を勘違いしていたという事でした。つまり、必要のない検査をしたために、不必要な争いを作ったわけです。
 2.3歳までの血液型は本当の血液型と違うことがある
こどもの赤血球は大人とは違い、血液型物質の表現が弱いことがあります。ですから本当はA型ですが、Aの表現が弱いためにO型と勘違いされることがあり得ます。そして、@のようないらない争いを招くことも考えられます。つまり、3歳以前の血液型検査には嘘をつかれることもあるということです【ただし、確率的には本当に少ないことです】。
 というわけで、こどもの血液型の検査を希望される『大人=親』の皆さんには上の話をしましてそれでも検査されるかどうかをお聞きします。そんな面倒なことを言わずに黙って検査してくれたらいいじゃないかと思われるでしょうが、痛い思いをするのはこどもですから、「私たちは、不要な検査でこどもを泣かせたくない」のです。それでも知りたいときは、病気の鑑別のためにどうしても血液検査が必要なときに「ついでに血液型検査も」といってもらえれば、わざわざこどもに痛い思いをさせなくて済みます。
 さらに困ったことは、保育園・幼稚園が名札の裏に血液型を記入するから検査して来い、ということです。名札の裏に個人情報をぶら下げて歩くなんておかしな話です。私は適当に書いといてくださいか、書かないでくださいと言っています。
 困った文化に染まっている私たち日本人
 最後に、あの血液型性格判断には本当に笑ってしまいます。欧米人からは「いかに日本人は非科学的か」の好事例と思われます。この場合、たいてい性格的に問題のある血液型はB型かAB型と書かれます。なぜか分かりますか?つまりこの血液型が少ないからです。たとえば、「A型は性格が暗くてしつこい」と書いたとします。日本人はA型が一番多いわけですからその人たちをけなしたら大変です。本は売れないし文句は来るしと言うことです。その点少数派はけなしてもしょせん少数派ですから大丈夫です。あれほど流行った血液型性格判断も下火になりますが、また何年かしたらかならず復活して「やっぱりあの人はB型よね。」と人への差別のためそして自分の優位な気持ちのために使われるのです。親からの遺伝で決まる血液型で性格が決まるならば、結婚はまず相手の血液型を知ってよく考えてからにしましょう?どんなに好きでも血液型で不幸なこどもが生まれそうならその結婚はぜひおやめください!血液型釣書でも持って恋愛しましょうか。
 正しいことを知ることは、大切と思います
 
かどの三条こども診療所長 奥原賢二