胃潰瘍
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 「潰瘍」とは、皮膚や粘膜などの表面がただれて崩れ落ちている状態のことです。胃潰瘍は十二指腸潰瘍と合わせて、消化性潰瘍(胃酸が原因で起こる潰瘍)と言われています。
胃潰瘍による症状
 胸やけや食欲不振、心窩部(みぞおち)病など、潰瘍の程度や場所によってさまざまな症状が出てきます。一般的に痛みの症状は胃潰瘍では食後に強く、十二指腸潰瘍では空腹時に強いと言われています。
 潰瘍が進行すると出血をともなう場合があります。動脈からの噴き出すような出血から、ジワジワとしみ出るような出血まであり、吐血や下血、黒色便(大量の出血により便が里くなる)などの原因になることがあります。吐血は、鮮血の場合もあれば、血が黒くなっていることもあります。
 さらに潰瘍が深くなり、胃に穴があいてしまうことを胃穿孔と言います。激しい痛みが出現し、腹膜炎という極めて重篤な炎症を起こすことがあります。出血や激しい痛みが現れたら、すぐに医療機関の受診が必要です。
胃潰瘍ができる原因は
 食べた物を消化してくれる胃液には胃酸が含まれており、胃の粘膜を消化するほどの酸性度があります。そのため胃粘膜が消化されないよう、胃は粘液を出して防御しています。胃酸が「攻撃因子」、胃粘膜の抵抗力や粘液が「防御因子」で、普段は両方のバランスが保たれています。
 ところが「攻撃因子」が強くなって体の抵抗力が低下し、粘液の分泌が減ることで「防御因子」が弱くなってしまうことがあります。すると胃酸が胃粘膜を消化して傷つけてしまい、胃潰瘍や十二指腸潰瘍が発症します。胃粘膜組織が欠損する深さによって、「びらん」と「潰瘍」に分類されます。
 ストレス社会と称される現代の日本で、胃潰瘍は非常に身近な病気です。肉体的、精神的なストレスによって、自律神経に変調が起き、胃酸が過剰に出て、胃の粘膜表面の血流を悪化させると考えられています。また、たばこやお酒やコーヒー、刺激の強い香辛料などの過剰摂取も、胃潰瘍の原因となることがあります。
 胃・十二指腸潰瘍の原因として近年有名になったヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は胃の中に住みつく細菌で、日本人の中高年で約70〜80%の人が感染していると言われています。ピロリ菌はアンモニアをつくることで胃酸から身を守り、胃に住みつづけ、胃粘膜を傷つけて慢性胃炎や胃潰瘍をひき起こします。
 「痛み止め」や「解熱鎮痛剤」などの非ステロイド性抗炎症薬も長期間内服すると、胃の粘膜の血流低下などが起こり、胃潰瘍の原因になります。しかし、「脳梗塞」や「心筋梗塞」などの治療や予防の目的で使用されることがあるので、自分の判断で服用を中止せず、主治医と相談しましょう。
検査方法
 胸・腹部レントゲン写真は、潰瘍、穿孔の有無を診断するために有効です。胃がん検診などでなじみのある胃部レントゲン写真(バリウムを服用する検査)では、胃壁の変化をみることができます。
 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)は、直接胃の中を映像で確認することができ、これも診断には欠かせません。基本的に胃潰瘍から胃がんへの移行はないとされていますが、胃カメラで観察しても、それだけでは早期胃がんとの区別が困難なこともあります。胃がんが疑われる場合は検査時に組織を採取し、顕微鏡で観察(病理検査)して診断をします。
 ピロリ菌感染の検査は、胃カメラのときに採取した組織を使用して検査をおこない、感染の有無を確認します。また、血液検査や検査液を飲んでから吐いた息で判定する検査(尿素呼気試験)もあります。
治療方法
 薬物治療は症状の改善や治癒促進、再発予防を目的とし、酸を抑える制酸剤で攻撃因子を弱め、粘膜保護剤で防御因子を強めます。治療薬にはさまざまな種類がありますが、これらの薬剤を病状によって選択し、治療をしていきます。
 ピロリ菌を除菌することで、胃潰瘍の再発が劇的に減少します。除菌治療は抗生剤や制酸剤を1週間内服し、約3カ月後に除菌が成功したかどうかを確認します。除菌の副作用として、一時的に便秘や下痢、味覚障害などが出現することがあります。日常生活に支障をきたすほど症状がひどい場合は、除菌治療を中止します。
 現在では薬の開発がすすみ、胃潰瘍による手術の件数は激減しました。しかし、大量出血や胃カメラでの止血が困難な場合、穿孔などの重篤な症状を認めた場合には手術をおこないます。
 とくに自覚症状がない場合でも、早期に治療すべき胃潰瘍や胃がんが発見されることもあります。健康診断を受ける際など、定期的に胃カメラを受けることをおすすめします。
いつでも元気No245より転載(安東加恵 大分健生病院・内科)